飛べない鳥
俺の鼓動はいつもより速く動いている。



唯が可愛いから、俺の中がおかしくなるんだ。



責任とれよ?



俺達は暫く黙ったまま、
ただ空を眺めていた。



『遥斗?』


『何?』



『ただ呼んだだけ…』



『意味分かんねぇ…』



唯が俺の名を呼ぶと、
緊張してしまう。


苦しい、苦しい、助けて。


青空をたくさんの雀が横切っていく。


一羽の雀を先頭に、その雀の後をついていくように、他の雀は飛んでいく。



俺はまだ願っている。

鳥になりたいって…


すると唯がポケットの中から何かを取りだし、俺の目の前に差し出してきた。


その差し出してきたものとは、四ツ葉のクローバーが入ったキーホルダーだった。



『なにこれ?』



『…前のお母さんがくれた最後のプレゼントなの』



『…そうなんだ』



そのキーホルダーは少し汚れていて、チェーンのところが錆びていた。


唯はいつも大事に持っていたんだ。
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