飛べない鳥
『遥斗?』


唯は急に黙りだした俺を心配したのか、俺の肩を揺さぶる。



『何でもねぇよ?』



『そっか…急に黙るんだもん!びっくりしちゃった!』



『ごめん、ごめん』



この些細な時間は、
俺にとって大切な時間なんだ。


一日24時間あるが、
その中でこの時間だけが、素直な俺でいれる時間だ。


─キィー…


いきなり冷たい風が背中に当たる。


そして、屋上のドアが開く音も聞こえた。



俺は後ろをゆっくりと振り返った。


そこには、険悪な面持ちをした──……



美咲がいた…


美咲は怒った顔で唯を睨んでいた。



『みっ美咲?』


美咲は何も言わず俺の方に近付いてきて、俺の腕に掴んだ。



唯は唖然と美咲を見ていた。



『遥斗!ここにいたんだ!朝からいないと思ったら!!ねぇ!あなた遥斗のなに?!』


唯に思いきり叫んだ、美咲。


俺は呆然と立ちすくしていた。
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