飛べない鳥
あの時と同じだ。


唯の温もりが、じんじんと伝わってくる。


離したくない…

愛しい…愛しすぎる…



『遥斗?』


唯は歩くのをやめた。


俺もその場所に止まった。

『どうした?』


『先輩は、遥斗のことが好きなんだと思う』



『…うん』


なんとなく分かっていた。
美咲は俺に気があるんじゃないかって。


でもあまり認めたくなかった。


好きになられても、俺には幸せにしてあげれないから。



『先輩のことも考えてあげてね?』



『…あぁ…』


俺は再び歩き出した。


下を向いて、唯の歩幅に合わせて、教室に向かって一歩一歩歩いて行った。



唯は優しい。


本当は美咲のこと知られたくなかった。


俺は最低だろ?



すると前方から大きく口を開けて欠伸をしながら一人の生徒が歩いてきた。



見覚えのあるヤツ。


そいつは俺達を発見すると指を差しながら、廊下全体に響くような声で叫んだ。


『あ──!!!』




はぁ…見つかった。
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