飛べない鳥
─…ドクン…


─…ドクン…


同じ音が同じ速度で鳴り響く。



『…は?』



『いっ嫌ならいいけどダメかなぁって…』


目を泳がせながら、
唯はゆっくりと俺のカバンを離した。



夕日のオレンジ色が、
下駄箱全部を包んでいく。


『…嫌じゃない…帰るぞ』


俺は唯の腕を握り、
学校を出ていった。


『遥斗…?』



唯の帰り道すら分からない俺は、駅に繋がっている道を早足で歩いて行った。



『あっ…唯、この道でいいの?』



『うん!大丈夫!私電車だから』



『そか…』



早足で歩いたせいか、
あっという間に駅に着いてしまった。


着いた時、もっとゆっくり歩けば良かったと後悔した。




人間は人間に恋をする。


俺もその一人だ。



俺は忘れていた。


唯のことを好きな人間は、俺以外にいるということ。


すると突然、唯が誰かを指差しながら叫んだ。



『あれ?!葵《あおい》─!?』




…葵?誰だ、お前。
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