飛べない鳥
葵がこっちに向かってくる。


聞こえるのは電車の音と、俺の心臓の音。


そして、葵の香水の甘く、男らしい匂いが香る。



俺の目の前に葵が立ち止まった。



葵は、学ランを着ていて、髪はサラサラとした黒髪。目はすごく綺麗な瞳をしていて、背は俺と変わらないくらいある。


男の俺から見ても、
羨ましいと思ってしまうくらい、綺麗な顔立ち。



『遥斗、この人は、今村葵《いまむら あおい》って言ってね、私の幼馴染みなの!』



唯の言葉を聞いて、
俺の中のなにかが壊れた。


幼馴染み…?


こいつが…唯の?



葵はぺこっと俺に会釈をした。



『幼馴染み…?』



俺は唯に違う答えを求めた。


『家が隣なんだよね!』



でもその願いは一瞬にして消えた。



俺は気が付かなかった。


その頃、葵が俺を鋭い目付きで見ていたということ…
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