飛べない鳥
『葵、この人はね、私と同じ高校の遥斗!』


唯が笑顔で俺の紹介をする。


俺は苦笑いするしかなかった。



『…遥斗って言うんだ?』


葵が、俺に話しかけてきた。



『…あぁ…』



『唯を頼むな、学校だけな。あとは俺が面倒見るから』



『は?唯はおめぇの道具じゃねぇだろ』



いきなりこいつは何を言い出すんだよ。


腹が立つ。


…もしかして…こいつ…



『俺の方が唯を知ってるんで』



葵は、唯の手を握り、改札口に向かって行った。


唯はびっくりした様子で、葵に引っ張られて行ってしまった。



『遥斗…ごめんね?また明日ね!!』



唯は大きく手を振って、駅のホームへと消えていった。


一人寂しく残された俺。


ただ残っているものは、
葵の香水の匂いだけだった。
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