飛べない鳥
俺はギュッと手を握り絞め、先ほどのことを思い出していた。



なんだよ…葵ってやつ。


あいつ…唯のこと…
好きなのかもな。



ムカつく。


最悪な宿敵登場だ。


俺は舌打ちをし、
改札口を通り、電車が来るのを待った。



『…うぜぇ』



俺は安心していたようだ。

唯を好きなやつは俺以外にいない、と。


何を勘違いしてんだよ。


馬鹿じゃねぇの、自分。



─…まもなく二番線、列車が参ります…



アナウンスが流れ、
数秒後、電車が時間通りに駅に来た。



俺は電車に乗り込み、
地元に帰って行った。


地元に帰っても、
まだ俺のイライラは治まることはなかった。



『負けねぇ…』


負けるか、あんなやつに。


でも…唯は、
もうあいつのことが好きなのかもしれない…



どうすればいいんだよ…俺──……
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