飛べない鳥
話しかけろ、話しかけろ。


心の中にいるもう一人の自分が、俺に向かって叫んでいる。



でも俺はそんなこと出来なかった。



…ある日の夕方の教室。


俺は一人寂しく、誰かを待っていた。



机には一通の手紙が置いてある。


その内容は、


《今日の夕方、教室で待っていてください。話があります》


可愛らしい丸い文字でこう書かれていた。


差出人の名前はない。


最初これを見たときは、
悪戯だと思っていたが、響に相談したところ、



『一応待ってみれば?』


という返答が返ってきたので仕方なく教室で待つことにした。



夏が近付いてきているのか、日が沈むのが遅い。



教室がだんだんとオレンジに染まる。



『はぁ…』



何分待っただろうか?


一向に差出人が現れない。


俺は諦め、カバンを持ち、帰る準備をした。



─…ガラガラッ…
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