飛べない鳥
俺は曖昧な返事しか出来なかった。


『それって…』



『考えさせて?』


俺は今すぐに返事は言えなかった。


もっと、もっと大事なことが俺にはある。




『分かりました…』


杏は少し残念そうな顔を浮かべて、ぺこっと一礼をし教室から出ていった。


足音が聞こえなくなると、俺はため息を漏らした。



『はぁ…』


そして唯の席を見る。


すると唯の姿が現れてくる。



幻想?妄想?


それでもいいよ、
唯を見れるだけで…



俺はカバンを持ち、
教室を出ていった。



オレンジ色に染まる学校は、すごく綺麗で…


俺はそんな学校に背を向けて、帰り道を歩いていく。


杏という子は怖くなかったのだろうか?



好きな相手に好きと伝えて…怖くなかったのだろうか?



俺だったら…怖くて言えない。
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