飛べない鳥
唯に好きだと伝えていたら、何か変わっていただろうか?



いや、無理だろう。


俺には、勇気がないから。


『…勇気?』


俺は立ち止まり、
街灯を見上げる。


街灯が俺を照らす、
まるでスポットライトだ。


俺に今勇気というモノがあるだろうか?



勇気がないから、唯に話しかけられないのではないだろうか?



勇気がないから、唯に好きだと伝えられないのではないだろうか?



俺には勇気が足りない。


飛べない鳥は──……




『…斗?遥斗?』


ぽんぽんっと二回、誰かに肩を叩かれた。



『え?』


後ろを振り向くと、
スーパーの袋を両手に持った美咲がいた。



『こんなところでどうしたの?』



美咲が《こんなところ》と言うのも無理はない。



ここはマンションの目の前だ。




『やっ考え事?』
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