飛べない鳥
『ただいま…』


帰りの挨拶をしても、
部屋から《おかえり》という返事はない。


…当たり前か。


俺は部屋の電気をつけ、部屋着に着替える。


そして冷蔵庫の中にある残り物で夕食を作る。


もう一日が終わろうとしていた。


俺はベットに寝転びながら、今日あったことを振り返っていた。



『杏…ね』


やはり印象的なのは、杏という子からの告白だ。



杏という子を思い出すと、すごく小柄で、まるでフランス人形のような外国人風の顔立ち。


あんな子学年にいたか?



響は可愛い子には目がないが、杏という子の話など一度も出たことがない。



俺は確認をするため、響に電話をした。



─…プルプル…



『はい?』



『え?』


聞こえてきた声は響の声ではなかった。


紛れもなく女の声。



『橘君?』
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