飛べない鳥
青信号がパカパカと光り出した。


俺は小走りで最初の場所に戻る。



香織が言ってたことはやっぱり当たっていたんだな。

そんな俺を苦しめてなにが楽しいんだよ?なぁ?



俺は苦しい胸を押さえて、呟いた。




『さよなら…』


この声は反対側にいる唯達に聞こえることはなく、
車の雑音で消えていった。


この恋は叶わない。


この恋はもう終わりなんだ。


俺は覚悟を決めた。


唯を忘れるために…


でも俺は後悔することとなる。


俺に足りないモノが分かったのに…それを行動に移せなかった俺が悪い。



俺にもう少しだけ…
ほんの少しだけ…


勇気があれば─……



何か変わっていたかな?



俺はグラデーションになった空を見上げ、微笑んだ。


カラスが鳴きながら夕日に向かって飛んでいた。



…いいな、お前には勇気があって──………
< 228 / 354 >

この作品をシェア

pagetop