飛べない鳥
俺が今日遥々ここに来たのも、ちゃんと理由がある。


それは杏に返事をするためだ。



『あっそっか…まだもらってなかったよね…』



杏は下を向いて、緊張した様子をしていた。



俺は不覚にも、杏を可愛いと思ってしまった。


唯より…唯以上に…



『杏ちゃん!本当に遥斗なんかでいいの?』



『私は橘君がいいんだもん!』



杏は響に向かって舌を出した。



─…ドクンッ…



『俺さ…』



外から心地のよいそよ風が吹いてきた。



なびく、杏のフワフワの髪の毛。


髪の毛の間から杏の大きな瞳が覗いた。



もう一度、同じ音で心臓が鳴る。



─…ドクンッ…



俺は、自分の気持ちを見失っていた。


杏なら唯以上に好きになれるかなって思っていた…


曖昧な気持ちが一番ダメなのに…




俺は最低なことをした。


自分で自分を傷めつけた。




『お前と付き合うよ』
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