飛べない鳥
俺は自分の気持ちに見失っていた。


心の中に眠っている、
俺だけしか分からない、
本当の気持ちを──……



『はっ遥斗?お前、何言ってんだよ?』


響はまさか俺が杏の告白に《いいよ》なんて言わないと思っていただろう。


驚いた響は、動きを止め、俺をずっと見ていた。



杏も、響と同じだ。



俺達は、無言になる。


だが、その沈黙を俺が破った。



『でもよく聞け、杏。
俺はお前のこと何も知らねぇし、お前のどこが好きと聞かれても答えられねぇ。分かったか?』




『…うっうん…え?でも何で私なんかと…』



お前なら好きになれそうだったから。

お前なら…唯以上に愛せると思ったから。


でもこの理由は自分の心に秘めて、杏にはこう言った。




『─…好奇心』



するとその瞬間、
そよ風以上に強い風が俺達の間を吹き抜けていった。
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