飛べない鳥
─…キーンコーンカーンコーン……


この音で一時杏とはお別れだ。


俺はフワフワの杏の髪の毛を撫で、教室に戻るため、足の向きを変える。



『またな』


俺は笑顔で言うと、
杏はさっきよりも真っ赤な顔をして、手を振って教室に入って行った。



『ど~しよ~!!!』



8組からは杏の叫ぶ声が聞こえてくる。



『あいつ、まじ笑える』



俺はそんな杏に笑ってしまった。



『遥斗、お前はそれでいいのかよ?』



隣にいた響が俺を睨み言った。


響が怒るのも無理もない。

俺は下を向き、頷いた。



『いいんだよ』



すると響は俺の肩を掴み、歩く俺を引き止めた。



『よくねぇだろ?!お前、菊地は?もうどうでもよくなったわけ?』



響は滅多に怒らない。


怒った響を見ると、
何故だか何も言えなくなってしまう。




…響、ごめんな…
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