飛べない鳥
『…ごめんな』


俺は外を眺めて、空に向かって謝った。



俺がもっと早く…
唯に好きだと気持ちを伝えていれば…響にも迷惑かからなかったかもしれない…


俺の足は勝手にここに向かっていた。


久しぶりに入る屋上。


もう来ないと言ったのに、来てしまった。


またここから見る景色を見たかったんだ。



『…今日も綺麗だ…』



何も変わらない…

屋上から見る景色は、やはり一番綺麗だ──……



『遥斗!』



俺は誰かに呼ばれた気がしたので、辺りを見渡す。



屋上の入り口に、君の姿があったんだ。




『唯…』



俺は笑顔で立っている唯に一歩近付いた。


そしてまた一歩。



俺は唯に手を差し出した。


唯も俺に手を差し出してくれたが…唯の姿は儚く消えていった─…



俺が見たのは唯の幻想。



幻想でも、唯を見たら、
心臓はうずきだす─…
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