飛べない鳥
俺はその場にしゃがみ、
胸をおさえた。



響が言った言葉が駆け巡る。


もし目の前に唯が現れたら、俺は迷わず唯を抱きしめるだろう。



でも…俺は杏と付き合うと言ってしまった。

これを帳消しになどは出来ない。


杏が傷付いてしまうから。

やはり一番いいのは、この気持ちを押し殺すことだろう。


それがこの時、一番いいと思っていたが俺は間違っていたようだ──……



俺は暫くこの青空を見上げていた。



『戻ろ…』



俺は立ち上がり、
屋上から出て行った─…



そして教室に戻る。


響とはさっきあったことで、気まずい雰囲気になっていた。



『遥斗、さっきは悪かったな』



突然、響から謝ってきた。


『別に怒ってねぇよ…』



『悪かった…お前のことなんだし、口だししちゃダメだよな』




…口出ししてくれよ…


俺にはお前の助けが必要なんだ─……
< 239 / 354 >

この作品をシェア

pagetop