飛べない鳥
俺は、頑張っている杏に、頑張ってとしか言えなかった。



杏…俺のこと好きになってくれてありがとうな…



──…次の日、俺の中の何かが大きく動くなんて知らなかった…


刻々と、その時間に近付いていく。


今日もいつもと変わらない学校。


いつもと変わらない杏の笑顔。


俺は自惚れていた。


今日もいつも通り過ぎていくと思っていた。



俺は今日一日の授業を終え、楽しく会話しながら杏と帰っていた。



『あの人前もいたよね?誰待ってるのかなぁ?』



聞き覚えのある周りの声。

俺はふと校門を見た。




─…ドクンッ…


錯覚だろうか?



校門には学ランを着た、サラサラの黒髪の人間がいた。



俺は歩くのを止めた。



…何で?



『遥斗?』


杏が?マークを浮かべ俺を見た。





『久しぶりだな、遥斗。
新しい女が出来たから、唯のことなんかどうでもよくなったのか?』





…何で…お前が─…






『葵…』
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