飛べない鳥
駅を通過していく電車。


その数秒後に風が吹いてくる。


俺はその風にいくつ当たっただろうか?



葵は一向に話そうとはしない。


我慢を切らした俺は、葵に話しかけた。



『…話って何だよ?』



葵は一点を見つめたままで、まるで俺の声が聞こえていないようだ。



すると葵が口を開いた。




『お前の隣にいたあの女は彼女か?』



…杏のことか?



『あぁ、彼女だよ』




『唯のことはもう好きじゃなくなったのか?』



ゆっくりと葵の顔が俺に向けられてくる。


俺は…何も言えなかった。


自分の気持ちが分からないから、俺は返答に困っていた。




『…唯は今辛い思いしてんのに、お前だけ幸せになっていいのかよ?』




『は…?辛い思い…?』



何を言ってんだよ、葵。


お前がいれば唯は辛くないだろ?
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