飛べない鳥
駅に流れるアナウンスや、電車が来る音すら、今の俺の耳には入ってこない。


葵の言っている言葉が、今になってようやく理解が出来た。



俺は…てっきり唯と葵は付き合っているのだと思っていたが、それは全て俺の勘違いだったのか?



…何してんだよ…俺…



『でも遥斗は唯のこと忘れられたから今の彼女と付き合ってるんだよな?』


葵の言葉ひとつひとつが、俺を後悔させていく。




違う…違う…違う!!!



俺は…唯を忘れてなんかいない…




『忘れてなんか…いねぇよ…』



駅のホームに、捨てられた空き缶が転がっていく。



俺はそれを目で追っていく。



その空き缶が行き着いた場所は、ゴミ箱。


やはり、モノも人間も、安らぐ場所を求めているんだな…



何でこんなことになったのだろう?




唯…君に逢いたい…
< 257 / 354 >

この作品をシェア

pagetop