飛べない鳥
俺はゆっくり立ち上がった。


みんなの視線が俺に集まる。


見るな…


見るな…。



『橘 遥斗《たちばな はると》 以上』


静かな教室に、俺の低い声が響く。


俺はこれだけ言うと、
すぐ座った。


『橘君ね?何か一言言うことはない?宜しくとか…』


俺は新米教師をあの朝の二人組を見た冷めた目付きでみた。


『…ねぇよ』


一瞬、新米教師が凍った。

新米教師は、慌てて自己紹介を再開する。


教室は、さっきの俺の一言で、ずっと黙ったままだった。


───……


『じゃあ次どうぞ?』


『はい、えっと…菊地唯《きくち ゆい》です。
みなさん宜しくお願いします』


俺はゆっくりと今話した菊地唯という人物の方を見た。
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