飛べない鳥
もっともっともっと…


早く思い出していればよかったかな?


あの時のあの女の子が…




『遥斗、唯の事好きなら唯を守れるぐらいの力を身に付けろ。唯を泣かせるな。分かったな?唯を泣かせたら唯はもらうから』



葵が最後にこう言って、帰って行った。


俺はただ頷くだけで、《任せろ》なんて言えやしなかった。


俺はまだ唯を守れるぐらいの力はない。


唯を泣かせない力などないから。



──…俺は葵と別れると一目散に家へと向かった。


人間をすり抜けていき、
家路を急ぐ。



確かめたい、確かめるんだ。


無我夢中に走り、俺はローファーを脱ぎ捨て、クローゼットの中をあさぐる。


忽ちたくさんの段ボールが部屋を埋め尽す。



『どこだ…』



俺は、小さい頃の思い出の品が入っている段ボールを探していた。



でも中々見つからない。



『あっあった…』
< 260 / 354 >

この作品をシェア

pagetop