飛べない鳥
一応聞いてみよう、
先生なら知ってそうだ。



『先生…唯は今どこにいるか分かりますか?』



その瞬間、先生が握っていたハンドルを持つ手が強くなった。


俺はそんな姿を見逃しはしなかった。




『菊地?何で今頃菊地なんだよ?』



響が眉間に皺を寄せ聞いてきたが俺は無視をし、先生の答えを待った。




『先生知ってるんだろ?教えてくれよ…』



先生は前を向いたまま、教えてくれそうになかった。


俺は諦めて、車から離れようとした時だった。



先生が俺の方を見て、



『乗りなさい』


と、後部座席を指さした。


俺は後部座席のドアを開け、先生の車に乗り込んだ。


先生は勢いよくエンジンをかけ、アクセルを踏み、どこかに向かって行った。



『遥斗?俺の話は無視?』


響が後ろを向いて話かけてくる。



俺はぎゅっと手を握り響に言った。
< 266 / 354 >

この作品をシェア

pagetop