飛べない鳥
暗い車内。
先生の香水の香り。
後部座席に置かれている可愛い縫いぐるみ。


そして、俺の一言。




『大事な人が誰なのかようやく分かったよ…』




しーんとなる車内だが、
俺は悪い事など言っていない。


杏を利用したことは悪かった、自分の気持ちを誤魔化したことは最低だった。



でも…今俺の心には、誤魔化したりしていない素直な気持ちがちゃんとある。



振り回して…ごめんな…



『ふーん、やっと分かったのかよ。おせぇし、バカ遥斗』



響は前を向いて笑った。


俺も響につられて笑ってしまった。



『先生、どこ向かってるの?』



先生は一言も話さず、車を動かしていた。



そして赤信号で車は止まる。



すると先生が、俺の方を向いて真剣な顔をしてきた。



『橘君?今…菊地さん大変なのよ…』




葵もそんなようなことを言っていたな?


一体唯に何があったんだよ…
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