飛べない鳥
唯の涙は冷たく、でもどこか温かい涙だった。


唯の頬には次々と涙が流れ、この感情を抑えられなかった俺は、ついに唯の手を引っ張り、自分の方に体を寄せた。


そして腕を回し、唯をぎゅっと抱きしめた。



『遥斗?!』


案の定、唯は訳が分からなくなっているようだ。


唯の熱や、唯の心臓の音が体越しに伝わってくる。



全てが愛しい…
唯が愛しい…


そう思えば思う程、
唯を離したくないと思ってしまう。



『ごめん……唯の気持ちとか気付いてあげれなくって…』



俺は小さな声で唯に囁いた。


唯は初めは硬直していたが、落ち着いたのか、唯の腕が俺を抱きしめた。




『ううん…こうして遥斗は逢いに来てくれたじゃない…嬉しいよ…』




『うん…』



俺はもっともっと、
唯を強く抱きしめた─…
< 271 / 354 >

この作品をシェア

pagetop