飛べない鳥
俺にはまだ杏というちゃんとした彼女がいる。


それなのに、俺は自分の感情が抑えられずに唯を抱きしめてしまった。




『唯…俺ちゃんとするから、待っててくれるか?』



唯は背を向けている俺に抱きつき、首を縦に振った。


唯、待っててな?
もうお前を泣かせたりしねぇから。
お前を守るから─…



俺と唯は、並んで病院を出て行った。



病院の前には、先生と響が待っていてくれていた。



『遥斗、菊地に逢えたんだな!よかったじゃん』



笑顔で迎えてくれた響に、お礼を言った。



『さぁ、明日は学校だし早く帰るわよ!』



そう先生は言い、
シートベルトをしめ、アクセルを強く踏んだ。



『ねぇ!何で沢村君と先生が一緒にいるの?』



突然唯が聞いてきた質問で、先生と響の動きが止まった。




『唯を迎えに行くためについてきてもらったんだよ』
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