飛べない鳥
俺が真剣な目で杏を見たから、杏の笑顔はすぐに消えた。



杏も話の内容をだいたいは把握したのかもしれない。

俺達を取り巻く、どんよりとした空気が、俺は腹が立つほどムカつく。


世界がそんな暗かったら、俺達まで暗くなるだろ?


やっぱり俺は逃げているんだな…なんとなく分かる。


杏を傷つけないような言葉を選んでいる気がする。



俺は静かに口を開けた。



『杏…俺さ、杏より好きな…』



『いやっ!!』


杏は俺が全てを言い終わる前に、俺の言葉を阻止した。


耳を抑えて、首を横に降って、俺の話を聞かないようにしていた。



『杏…』



『いやっ聞きたくないっ!』



耳を抑えている杏の手に、俺は優しく触れた。




『俺の話聞いてくれ』




『だって遥斗が今から言う事は悲しい事でしょ??』


杏は震えた声で、言った。
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