飛べない鳥
時計の針が、少しずつ動いていく、そしてあっという間に一周する。


一分というたった短い時間が、苦痛で仕方ない。


俺は頬杖をつき、時計を睨んだ。


『早く進めよ…』



俺の過去を知る者は、響と施設の人しか知らない。


これから聞かれても、絶対俺は話さないだろう。


《可哀想》という言葉に片付けて欲しくない。


何が可哀想なんだ。


俺だってお前らみたいな格好してるじゃねぇか。


俺は時計を睨むのをやめ、下を向き、一人の世界へと行った。


自己紹介が終わるのを、
無になって聞いていた。



───…………



『みんなありがとう!
少し時間がかかると思うけど、ちゃんと覚えていくのでお願いしますね!』


先生が自己紹介が終わったのだという、最後の締め括りの言葉を言った。


俺はそれを聞くと、現実の世界へと戻った。
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