飛べない鳥
響と別れ、俺は歩くスピードを速くし、部屋へと向かった。



そしてポケットから紙切れを取りだし、一呼吸をつく。


携帯を開け、0のボタンを押そうとするが、なかなか先に進まない。


緊張してんだな。



『はぁ…』



次第に手が汗で湿っていく。


俺は勇気を出し、0のボタンを押した。


そして次の数字のボタンを押していく。


順調にボタンを押していく。


全ての数字が画面に揃ったとき、俺は何かに解放された気分となった。



そして最後のボタン。
通話ボタンだ。


ゆっくりとそのボタンに近付いていく。



─プルルッ…


電話の向こう側から、
音が聞こえだす。


俺は、通話ボタンを押していたようだ。



ワンコール鳴る度に、心臓が高鳴る。



『はい?』



耳に素直に入ってくる、
愛しい人の声。



『あっ俺だけど…』
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