飛べない鳥
『いらっしゃいませ』


受付にいた美容院のスタッフの人が営業スマイルで俺を見てきた。



『2時から予約していた橘ですが…』



冷房が俺の熱った体を冷たくしていく。



『橘様ですね?お待ちしていました。こちらへどうぞ』


スタッフさんが俺を奥へと案内してくれた。


そして一番奥の白い大きな椅子に座らせた。



『少々お待ちくださいね』

耳元でこう囁いて、どこかに行ってしまった。



俺の目の前には大きな鏡。
自分の姿が写っている。


俺は髪の毛を触り、色を確かめる。


そんなに酷い色ではないと思うんだけど。



周りには沢山の若い人たちがスタイリングしてもらっている。



俺はキョロキョロと辺りを見渡していた。



俺のことは無視かよ?

少々お待ちくださいって言って何分待たされるわけ?


短気な俺は、落ち着かせるため、近くの雑誌を手に取った。
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