飛べない鳥
今日改めて思った。


人間は難しい。


人間はよく分からない。


分かろうとしたくない。


助けてくれ、


なぁ、親父、ヒナ…


俺もお前らと同じ場所に連れて行ってくれよ──……

『遥斗…そろそろ笑えよ、いつまで笑わないつもりなんだよ…お前の笑顔…お前と出会った時から見たことねぇし…』


響が、俺の後ろで静かに言った。



俺は足を止め、響の方に振り返った。



『笑え?バカ言うな。
俺は笑う資格なんてねぇよ』



『忘れろよ!過去なんて!俺、忘れられた。今があればいい』



響は強い眼差しで俺を見た。


だが俺はそんな響を受け止める事は出来ず、視線を空に向けた。


忘れろ?


今があればいい?



『…無理だ、俺は今だにあの母親の笑顔が忘れられない。…行くぞ、響。電車に乗りおくれる』



『…ああ』



最後の母親の笑顔が、
俺の脳裏にまだ焼き付いている──……
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