飛べない鳥
俺は現実に戻り、目を反らした。



『やっ…何でも…』



『今日橘様を担当させて頂く、坂井と申します』



坂井という美容師は、ポケットから名刺を取りだし、俺に渡してきた。


俺はその名刺を受け取る。




『坂井…光輝…』



こう俺がその人の名前を呟くと、にこりと笑いかけた。



…光輝…


どこかで聞いたことのある名前だ…



どこだったかな?
ずっと前だった気がする…


俺は頭の中をフル回転させ、思い出していく。



『流れ星…』



そうだ、この人とずっと前に会ったことがある。


流れ星の話をしていた人だ。




《流れ星は誰かの願いが叶う頃に流れる》と彼女と話していた人だ。



『流れ星ですか?』



『俺、あなたを見たことあります。その時、流れ星の話をしていました』




『流れ星は誰かの願いが叶う頃に流れるって話ですか?』




俺は、この話を信じてみようと思ったんだ─…


光輝さんの話が、とても素敵な話だったから…
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