飛べない鳥
『じゃあ上手くいったわけ?』



俺が質問すると、響の声は聞こえなくなり、雑音だけが携帯から聞こえてくる。


俺は椅子に座り、響の答えを待った。



『遥斗?お前覚えてるか?』



『何を?』



響は静かな口調で淡々と話し始めた。




『泣くときは空を見上げて泣けって言ってくれたよな?いいものが貰えるって言ってただろ?』



『あぁ…』



『あの時見た世界がさ…今まで見たことがない世界だったんだ…』



響…泣いてるのか?



お前そんなに辛いのかよ…そんなに苦しいのかよ…



響の声を聞いていると、こっちまで切なくなってくる。


俺はなんて声をかけたらいい?
どんな言葉を選んだらいい?



『響…泣いてるのか?』




『泣いてねぇよ!俺が泣くわけねぇじゃん…』



強がるな、嘘をつくな。



響らしくねぇよ。
< 319 / 354 >

この作品をシェア

pagetop