飛べない鳥
人は強がって悲しいことを悲しくないと言う。


人は強がって愛する人を愛していないと言う。



強がらなくてもいいんだ。
弱音を吐いたっていいんだ。

苦しいなら苦しいと、
辛いなら辛いと言えばいいんだ。



俺は携帯を持つ手を強くした。




『…伝わるといいな、お前の想い』



こう言ったあと、響は必ず向こう側で大きく頷いただろう。


俺はお前にこんな言葉しか贈れないけど、お前は幸せになる資格があるから、幸せになってくれよな?


俺の分まで──…




『遥斗、俺さ…この想い伝わらなくてもちゃんと伝えるから。後悔しないように…好きだって言う』




『そうだな。お前の連絡待ってるよ』




『さんきゅ…遥斗…』



響は最後に俺に礼を言い、電話を切った。


響は今頃愛する人の元へと駆け出しているだろう。
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