飛べない鳥
いつもは煩い蝉の声でさえ、今日は祝福の声に聞こえる。



駅には家族連れの人々が沢山いた。


俺は遊園地方面の改札口付近で唯を待つことにした。


携帯を見ると、10時3分前だった。


10時に近付くにつれ、俺の緊張は高くなっていく。



『はぁ~…』



俺が息を吐くと、
誰かが俺の肩を叩いた。



ゆっくりと振り返ると…そこには…



『遥斗、待った?』



髪が綺麗に巻かれていて、ショートパンツに胸元がざっくりと開いたTシャツを着た唯の姿があった。



『いや…待ってないよ?』


俺は正直、どこをみたらいいのか分からなかった。


唯が可愛くて…


また殺られたよ。


また唯の虜になってしまった。



俺と唯は遊園地までの切符を買い、電車に乗り込んだ。


遊園地に向かうまで唯はずっとはしゃいでいた。


俺は隣ではしゃぐ唯をずっと見ていた─…
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