飛べない鳥
俺達はずっと手を握ったままだった。


離したことはなかった。
離したくなかった。


ずっと繋がっていたかった。


まだ帰るには早い時間だったが、俺達の足は出口に進んでいた。


行くときはあんなにはしゃいでいた唯も、疲れたのか俺の肩に寄りかかって寝ていた。


唯の香水の香りが俺をまた虜にさせる。



そして電車が地元の駅につくと、俺は唯を起こし、唯の家まで送っていくことにした。



唯に道案内をしてもらい、家を目指す。


この辺りは懐かしい感じがした。
なぜならば、ここの近くに施設があるから─…




『遥斗!ここだよ!』




唯が立ち止まった場所の玄関に《菊地》という表札があった。



すると玄関から誰かが出てきた。




『お母さん!』




『あら、唯おかえりなさい』



その人を見た瞬間…唯の手を握っていた俺の手が力が抜けるかのように落ちていった。




…あなたは…?



…嘘だろ?何で?



漆黒の闇が俺を包み、
俺を墜落させた─…
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