飛べない鳥
現実なのか、夢なのか。

もう考えたくない。


どうせ世界はこんな俺を見て腹を抱えて笑ってるんだろ?


ふざけんなよ…



『…何で?』


俺は低い声で唯の母親と名乗る人物を睨んで言った。

母親はびくりと反応をし、額から汗を数滴溢しながら、ゆっくりと口を開いた。



『遥斗…』



間違いない、とこの時改めて思った。



『俺の名前知ってんだ?』


母親は俺を真っ直ぐに見つめ、俺の方に近寄ってきた。


相変わらず、唯は訳が分からない表情をしていた。


それもそうだろう。
唯の母親が俺の母親だったなんて、誰も思うはずないから。



『逢いたかった…』



母親は俺の手を握り、こう言った。



…逢いたかった?


何言ってんだよ。


俺はあんたをずっと待ってたんだぞ?


でもあんたは俺を迎えに来なかったじゃねぇか…
< 332 / 354 >

この作品をシェア

pagetop