飛べない鳥
俺はこう言い捨て、唯の家から出て行った。


すると後ろからピンヒールのコツコツという音が聞こえてきた。



『遥斗…』



俺は振り返る。


そこには心配した顔をした唯がいた。



唯を見たら気がゆるんだのか、急に悲しくなってきた。


目頭が熱い。
喉になにかが込み上げてくる。



唯が一歩俺に近付いた。



『遥斗…』




『…俺…やっぱこの世界に必要のない人間なのかな?生まれてこなければ良かった…』



俺は走り、唯から離れて行った。




『遥斗──!!!』


遠くの方から唯が俺の名を呼んでいる。

俺は目をぎゅっと閉じ、唇を噛み締め、走った。



目的もなにもない。
ただこの世界からいなくなりたかった。



あんな形で母親に逢いたくなかった。


さっき母親が言っていた言葉も嘘にしか聞こえない。


消えたいよ…
この世界から俺を連れだしてくれ。
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