飛べない鳥
俺は暫くこの景色を眺めていた。



この景色を見ていたら、目から滴のようなものが流れ出た。


俺はその滴を触る。


その滴は水より少しだけ温かく、水より少しだけしょっぱい。


これは何だろう?


初めて目から滴が出た。



『涙…?』



これは涙なのか?


響や唯や美咲や杏が流していた…涙なのか?



俺にもまだ…涙があったのか?


もう枯れたはずだと思っていた。


もう泣けないと思っていた。


だが今頬を伝って落ちていくものは紛れもなく涙。



悲しい…苦しい。


胸がきゅうっとなる。


喉が痛い。
次々に溢れる滴。



初めての体験に戸惑ってしまう俺だったが、俺は空を見上げた。



小さい頃母親に教えてもらったように、俺は空を見上げて泣いた。




『こういうことか…』



母親が言っていたご褒美とはこのことだったんだ…
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