飛べない鳥
俺が彼女と出会ったことを《嘘》という一言に片付けたくはない。


彼女と出会ったことは本当のことなのだから。



今彼女はどこにいるのかな?


君は突然現れて突然消えてしまった─…



俺が《消えたい》と言った瞬間、彼女はいきなり立ち上がり、悲しい瞳で俺を見下ろした。



『そんなこと言っちゃだめだよ!!』



急に大きな声で言ってきたので俺は驚きを隠せないでいた。



『でも俺は…消えたいんだよ…』



俺はか弱い声で彼女に言った。



『本当にそうなっちゃうよ?本当に消えちゃうよ?!むやみにそんなこと言っちゃだめだよ…』



彼女は顔を両手で隠し、その場にしゃがんだ。


俺はそんな彼女を見て、胸がまた痛くなった。



いけないことを言ってしまったようだ。




『…ごめん…』



彼女は首を横に振り、顔を上げた。
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