飛べない鳥
『何でだよ!淳《あつし》だって和馬《かずま》だってお前に会いたいって言ってたし』


響の声がうるさかったので、俺は携帯を耳から離した。


淳?和馬?


中学時代、淳、和馬、響、俺でよくつるんでいた。


仲が良かった。

淳と和馬は俺の過去を知らない。


でも、過去を知らなくても友達は出来るものだ。


過去なんて、ただ邪魔なモノだ。


淳と和馬は、俺が笑わなくても、何も言わなかった。

それでもずっと一緒にいてくれた。


響まではいかないが、
俺にとっては大切な友達だ。


でも…俺は勇気がなかった。


『…やっぱ無理だな』


考え直してみたが、
やはりこの答えもバツ。


何回繰り返したってずっとバツだろう。


『今から迎えに行くから!お前は…いや、何でもねぇや。とにかく迎えに行くから準備しとけ!』


響に俺の答えが聞こえていなかったのだろうか?


…プツ─…ツ──……


静かすぎる部屋に、
悲しくなる電話がきれた音。
< 34 / 354 >

この作品をシェア

pagetop