飛べない鳥
顔には涙の痕が数ヵ所あった。


俺は彼女の泣き顔を見て、ごめんねという意味を込めて微笑んだ。



彼女も俺に微笑みを返してくれた。



『俺…好きな人がいるんだ…でも俺は人を信じることが出来なくて…それでも好きな人が好きなんだ…』



俺は淡々と唯のことを名前もしらない彼女に話していった。


彼女は隣で頷きながら、俺の話を真剣に聞いてくれた。



『私もね?好きな人がいるの』



俺はふと彼女の左手を見た。

左手の薬指には指輪がはめられていた。

キラキラと指輪が光っている。



『彼氏いるんだ?』



彼女はゆっくりと俺の方に顔を向けて、笑った。


だがその笑顔は、無理矢理作った笑顔だった。


偽りの笑顔─…



『あなたはいいよね?
好きな人に好きって言えるんだから…』



『どういう意味?あなたも言えるだろ?』




『私は…言えないの』
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