飛べない鳥
俺は彼女が言っている意味が分からなかった。


彼氏がいるのに何故好きと言えないんだ?


彼女は不思議な女性だった。



『意味が分からない…どうして?』


俺が質問すると彼女は前に視線を向けた。


俺もつられて前に視線をずらす。



『言えないのよ。私の声はその人には聞こえないから。だからあなたは羨ましい…』



すると彼女の瞳からまた涙が流れ出した。


彼女の涙はどこか透明で、魅力的な涙だった。



『…羨ましい…かな?
でも俺は飛べない鳥だから…言えないんだ』



『飛べない鳥?』



『なんて言えばいいんだろ。勇気がないから言えないんだ…』



俺には勇気がなかった。

前に進む力はあるのに、ただ勇気がなかったんだ。



だから現実から逃げてばっかりだったんだ。



『そんなことないよ…』
< 341 / 354 >

この作品をシェア

pagetop