飛べない鳥
なんだこの変な状態は。


でもあの頃に戻ったみたいだ。

あの、中学時代に──…


俺は和馬に言われた通り、人数分のグラスと、冷蔵庫から氷を取りだし、和馬に渡した。


『ほら…』


『さんきゅ、遥斗は何がいい?』


ずらりと並べられた酎ハイ。


俺は適当に選び、
缶を開け、グラスに注いだ。

シュワっと音を出し、
泡の粒がグラスにつく。


『よし、みんな持ったか?』


淳が俺達を見渡す。


『乾杯~!!』


カチンとあたるグラス。

いつも静かな部屋が、
今日は賑やかとなった。


『てか…響?お前中学の集まりに行くって言ってなかったか?いいのかよ?』


少しほろ酔いの響を揺らしながら俺は聞いた。


『あんなのいいんだよ!お前がいなきゃつまんねぇだろ!』


人間は難しい。


俺は、まだ知らなかった。

こんな俺でも、
みんなより少し遅れた、
恋というものが来るという事に──……
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