飛べない鳥
風呂から出ると、俺はタオルで髪をよく拭き、
冷蔵庫からレモンティーを取りだし、飲んだ。


レモンティーのこの甘酸っぱい香りと味が大好きだ。

きっとこの世界で俺が大好きなものは数少ないだろう。


大嫌いの方が遥に多い。


ドライヤーのコンセントをさし、濡れた髪を乾かしていく。


だんだんと乾いていく俺の茶色い髪。


ゆらゆら揺れながらと気持ちよさそうに笑っているようだ。



ふと思い出した。


『菊地…唯…』


菊地唯のあの笑顔を。


俺と目があったときに微笑んだあの顔を…


でもその笑顔はすぐに消えた。


何でいきなり思い出すんだ?


でも菊地唯の笑顔は、
どこか安らぐ部分があった。



大体髪が乾くと、俺はコンセントを抜き、歯を磨き、電気を消して眠りについた。
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