飛べない鳥
電車で駅に向かう途中、
ずっと響は唸っていた。


俺はそんな響を見て、
少しだけ笑えた。


『あ~…治らねぇかな…』

『お前が悪いだろ?あんなバカみたいに飲むから』


『遥斗、止めてくれよ』



『面白かったからやめた』

『ふざけんな…』


俺達は駅に着くと、
ゆっくり歩いて行った。


響のペースに合わせて歩幅を小さくする。


響は今朝よりは大分マシになったと言っていた。


俺にはそうは見えないのだが。


突然、響が歩むのを止めた。


俺は響の方を見る。


響はうつ向いたまま、
歩こうとしない。


『響?』


『なぁ、遥斗?お前さ年上の女ってどう思う?』



響が俺の目を見て変な事を言ってきた。


俺達の横を車が通っていく。


数秒後、風が吹き、俺達を包んだ。


散った桜の花びらが、少しだけ地上から浮いた。
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