飛べない鳥
『私、ここのマンションの五階に住む、桐谷美咲《きりたに みさき》って言うの!私、ずっと前から橘君の事知ってたんだ!』



笑顔で自己紹介をする桐谷美咲。


俺は正直どうでも良かった。


『ふ~ん』



『友達になってよ?だめ?』



首を傾けて上目使いをしてくる。


確かに可愛い、美人だ。


でも菊地唯みたいに心臓がリズムよく弾んだりしない。


『勝手にどうぞ』


『ありがとう!私の事は美咲って呼んで!橘君の事は遥斗って呼ぶから』



『何で名前知ってんの?』


『内緒』


俺はもう一度エレベーターのボタンを押し、エレベーターが来るのを待った。


『え…学校は?』


『行かねぇよ』


エレベーターがどんどんと下に下りていく。


そして再びドアが開けられた。



『じゃあね、遥斗』



美咲は手を振り、
マンションから出て行った。
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