飛べない鳥
俺は眉間に皺を寄せ、
すごく不機嫌なオーラを出しながら、歩いていた。



向かう場所は、あの場所しかない。


ドアを開けると青色が広がる。



俺はドサッと腰を下ろし、この苦しい胸をおさえた。


『いてぇ…』



やっぱり、菊地唯が気になるんだ。


菊地唯だけには、見られてたくなかった。



美咲の存在を知られたくなかった──……



恋って辛いんだな…


こんな辛いなら、したくない。



するとドアがゆっくりと開いた。



『橘君?』


この声は…


俺は勢いよく振り返る。



『菊地唯…』



そこには菊地唯が立っていた。



『やっぱりここにいた…』


菊地唯は俺の横に座り、
悲しそうな瞳で俺を見た。


『何?』



また胸が苦しくなる。



恋は、人を苦しくさせる。
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