星の唄
「はい、どうぞ。」
置かれたカップからは優しい湯気と美味しそうな紅茶の香りがした。
「アッサムティーだけど平気?」
結衣がカップを覗き込んでいるのを見て、ソラは笑顔で付け足した。
「ありがとう。」
「熱いから気をつけてね。」
結衣に注意を促しながら、結樹にはコーヒーを出していた。
そういえば、前に通っていたソラの部屋も至れり尽くせりだった。
三人のお茶が揃ったところで本題に入るのかと思えば、結樹は紙に何か書いている。
「お兄ちゃん、何書いてるの?」
「ん?あぁ、お前まだソラの事、思い出してないだろ?ほら。名前。」
結樹はズッと紙を結衣に見せた。
そこには¨奏空¨と書いてある。
「空を奏でる…?綺麗な名前…。」
「…ありがとう。二人みたいに両親の字はもらってないけどね。」
奏空は少し照れ臭そうに笑った。
結衣はまだ思い出してはいないが、奏空の名前を綺麗だと言ったのは2回目だった。