星の唄
チャットから出たユイは、今日出逢ったソラについて考えた。
星の部屋に何度も通っていたはずのユイが初めて会ったことも不思議ではあったが、それよりも不思議なことが多かったのだ。
例えば携帯電話だが、今は携帯電話を持っている人の方が少ない。
何故なら使えないからだ。
星と星の間が離れているので、メールをしたとしても何十年、何百年、もしかしたら何億年も経たなければ届かないかもしれないのだ。
もちろん、すぐに連絡がつく携帯電話も開発されてはいるが、ちょっと性能のいい宇宙船よりもとても高価なものだ。
その為、普通の人には買えないのだ。
しかし、恐らくソラが所持していたのは性能がいい方に違いない。
仕事で使うと言っても、大企業でも持っているところは数少ない。
それに義足だ。
黒い星の授業に出てくるが、実際見たことはない。
しかも義足を着けようとすると、義足と解らないようにカバーを付けることが出来るはずだ。
それなのにソラの義足は剥き出しだった。
携帯電話を所持していることとは噛み合わない。
さらには星の本を持っていることだ。
今、本というものはとても貴重で個人で持っていることはないものだ。
バーチャル世界に図書館はあるが、借りるのも読むのも全てデータであって本ではない。
ユイは星についてもっと知りたくて、図書館の書庫にも行ってはみたが本などは一切ないのだ。
考えても不思議なことばかりだが、恐らくソラは何か功績を残していてかなり裕福な環境で暮らしているのだろう…という考えで落ち着いた。
だから存在も隠したかったに違いない。
とりあえず、星を好きな話し相手が出来たことがユイにとっては一番の収穫だった。